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東京高等裁判所 平成2年(ラ)668号 決定

抗告人 北関東リース株式会社

右代表者代表取締役 石毛保房

右抗告代理人弁護士 澤田利夫

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

一  本件抗告の趣旨は、「原決定を取り消し、競売を開始する。」との決定を求めるというのであり、その理由は、別紙「抗告の理由」のとおりである。

二  当裁判所も、本件申立を却下すべきものと判断するが、その理由は、抗告理由に応じて、次のとおり付加するほかは、原決定理由説示のとおりであるから、これを引用する。

1  抗告理由1ないし3について

記録によれば、抗告人が本件申立において主張する請求債権は、本件リース料残元金五九九万三〇〇〇円(月額リース料分割払金額四六万一〇〇〇円の八四回分総額三八七二万四〇〇〇円から既払リース料月額リース料分割払金四六万一〇〇〇円の三二回分合計金一四七五万二〇〇〇円を控除した残額二三九七万二〇〇〇円のうち、平成元年九月分より同二年九月分までの未払リース料債権)であるというのであるが、本件公正証書中には、債務者から債権者に対するリース料残存支払回数(第一五回以降第八四回目支払分まで七〇回)、リース料の月額(四六万一〇〇〇円)、毎月のリース料の支払日(二二日)及び右のうち第一五回から第一八回支払分を昭和六三年七月一五日現金で支払うことは定められているが、その余の第一九回以降第八四回までの分割支払金については、ただ足利銀行本庄支店に於ける債務者名義の普通預金より口座振替の方法により支払う旨が記載されているに過ぎず、その支払期日についてはなんらの記載がないことが明らかであり、その他本件公正証書の他の条項を合わせてみても、右各月に支払うべきリース料金の支払期日を合理的に確定することができない。また、抗告人の申立にかかる平成元年九月分から平成二年九月分のリース料金支払債権が右のうちいずれにあたるのかも不明であり、したがつて、また、それら各債権の履行期も確定できない。

そうすると、本件申立に係る請求債権は、その支払期日が確定できないことになり、右債権について強制競売手続きの開始を求める抗告人の本件申立は許されず、これと同旨の原決定は相当であり、その認定判断に何らの違法もない。

2  抗告理由4及び5について

記録によれば、抗告人が、本件申立において当初主張した請求債権は、前掲債権とは異なるものであつたが、その後、原裁判所の釈明により、抗告人においてこれを訂正し債権の確定に努めたものの、遂に、原決定時までに右債権の履行期の確定ができなかつたことが明らかである。しかし、いずれにせよ、結局、本件公正証書の全条項によつても、本件請求債権の確定ができないこと前記のとおりである以上、その過程を云々して、原決定の違法をいうのは当たらない。

三  よつて、本件抗告を棄却

(裁判長裁判官 千種秀夫 裁判官 伊藤瑩子 近藤壽邦)

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